「悟り」の視点とはすべてを見通す力のことです。目に見えない世界も、目に見える世界も。自分自身のことも、宇宙の果てのことも。
効果があるとかないとか、うまく使うにはコツがいるとか、いまだに議論が絶えない「引き寄せの法則」。
スピリチュアルとか、ビジネスとか、業界によって見方が分かれるのもヘンな話です。それが宇宙法則みたいなものだとすれば、なおさらでしょう。
いったいなにが真実なのでしょう。
そして、スピリチュアルでそうあるとよいこととされる「今ここ」。「悟り」の極意という見方もあります。
けれど、実は、この両者は構造的に両立しにくいのです。
そんな「引き寄せの法則」と「今ここ」について、悟りの目から解き明かし、多くの人が気づいていない本当のこと、本当に引き寄せ、悟るために必要なことをまとめてみました。
1.復習ー引き寄せの法則とは
(1)要するになんなの?
あまり詳しくない方のために、「引き寄せの法則」について一般的に言われていることをまとめておきましょう。
引き寄せの法則とは、一言でいうと「思ったことが現実になる」ということです。
簡単なところでは、ケーキを食べたいなと思ってたら、何も言ってないのに家族が買ってきてくれた。
こんな家に住みたいなと願っていたら、たまたま知り合った人から、願ったとおりの家が空き家になるので管理人を探していると教えてもらった。
ものだけでなく、恋人やお金など自分が願う現実を引き寄せることもできると言われています。
むしろ、私は「引き寄せの法則」より、望む「現実の創造」といった方がしっくりくる感もあります。
(2)引き寄せの法則の最重要ポイント
引き寄せの法則が意味することのなかで最重要なのがこのポイントです。
つまり、「現実を創るのは潜在意識」ということ。
もちろん、世間一般では、「現実を創るのは行動」という理解が大部分かもしれません。
「そう思っている人にとってはそのとおりの現実が創られる」ので、これに反論するすべはありません。
そう思いたければそれでいいのですが、その欠点は、ちっぽけな自分の力(自力)でやることと思っているため、がんばり続けなければならないことです。(反面、自分でやったという充実感、達成感が得られるのが利点)
一方、潜在意識は集合意識を通じて普遍意識とつながっているので、大いなる存在の力(他力)を発動することができます。
ただし、行動しなくていいのかというと、一概にそうとも言えないのがややこしいところです。
たとえば、行動するのが嫌で引き寄せの法則に頼ろうとする場合、なぜ嫌なのかをみていくと、行動してもどうせうまくいかないという思いが隠れていることが多いです。
そうすると、この場合、潜在的にあるどうせうまくいかないという思いが実現してしまうわけです。
ではどうするのかについては、あとで詳しく触れたいと思います。
(3)取扱いにコツがいる潜在意識の特性
「現実を創るのは潜在意識」という最重要ポイントを知ったとしても、自分が思うとおりに、引き寄せの法則を使いこなすのは簡単ではありません。
顕在意識といわれる自分の思いと潜在意識は、食い違っているのが普通の状態だからです。
顕在意識の望みをいかにして潜在意識に伝えるかということかもしれませんが、それにはまず、潜在意識の特性について知る必要があります。
その特性のうち主なものとして、以下の3つを挙げておきます。
①今しかない
潜在意識には、過去も未来もなく、今しかないと言われています。
ここでは詳しくは述べませんが、大雑把に言うと、人間の意識には過去とつながっているエネルギー体があることや、個体をはるかに超越したレベルの普遍意識は3次元の時空間には縛られないことによると考えられます。
つまり、潜在意識はいつも「今ここ」の状態にあるとも言えます。
たとえば、(潜在意識に対する顕在意識で)「今は叶ってないけど、将来こうなりたい」と願ったとします。
潜在意識にとっては、現在と未来の切り分けができません。
潜在意識の立場からすると、「いったいどっちやねん」という話になりますが、現在の叶っていない状態と未来の叶った状態とではどちらがエネルギーが強いか考えてみてください。
常識的に考えると、日々それを体感している現在の方が強いのは当たり前ではないでしょうか。
意識の力が強く未来のことを信念を持って強いエネルギーで想起できる人もいるでしょうが、そういう人は稀な存在です。
②否定はない
また、潜在意識には否定はないとも言われます。
たとえば、ある部屋に「椅子がないとイメージ」して誰かに伝えてください。
正確にはそれができないことにお気づきでしょうか?
椅子がない部屋を想像することはできるでしょうが、椅子はないのですから、「椅子がないという状態」は相手に伝わりません。
潜在意識は言語による観念の世界ではなく、エネルギーという実存の世界にあります。
このため、潜在意識は「〜がない」という状態を理解しないのです。
③執着すると逆効果
特性の①と②から導かれることではありますが、何かに執着すると逆効果になります。
欲しいという思いは今の願いがかなっていない状態を強烈に潜在意識にインプットすることになるからです。
貧乏は嫌だと思っても、潜在意識は否定形を理解しないから、貧乏がインプットされます。
お金が欲しいと思っても、強く思えば思うほど、現在の状況が強烈に意識されて、やはりお金がない状態がインプットされるのです。
強く執着するのはなぜでしょう?心の裏側では手に入らないからと思っているからです。それが潜在意識にある思いです。
手に入ると信じていたら、気楽な気持ちで安心しているのではないでしょうか。
たとえば、レストランで食べたい料理を注文したときのように。まさか何度もホールの人に確認したり、厨房をのぞきにいったりしませんよね(笑)
(4)引き寄せの法則発動の条件
このように潜在意識は取り扱いに注意を必要とする性質を持っています。
そこで、引き寄せの法則をうまく発動させるには、以下のような条件を満たすことが必要と言われています。
①叶った時の状態に今なる
これは頭で考えているだけではダメです。現在は叶っていないわけなので、そちらの思いが勝ちます。
これを上回るには、心身ともに未来の願いが叶った時の状態になる必要があります。
つまり、潜在意識には「今ここ」しかないので、顕在意識による思考をそれに合わせに行くということですね。
具体的には、うれしい、やった!などの感情がわき、表情、態度など心も体も全身全霊で願いが叶った状態である自分です。
顕在意識のエネルギーは実はたいしたものではありません。
感情が我を忘れるほど強い力で言動を促すように、感情は直接的に人を動かす最も強力なものの一つです。
また、表情や態度など行動として体に現れた状態は、頭の中だけで考えているよりも、ずっと大きな力がかかっていることを示すものです。
②結果への執着を手放す
一方で、執着することもダメです。信頼してあとは委ねるのがいいと言われます。
何に委ねるかは人によりますが、神様でも、大いなる存在でも、宇宙でも、創造のプロセスでも、なんでもいいです。
とにかく、叶った自分に成り切って願いという意図を放ったのちは、一転してそれを手放すことが求められます。
手放せないことは、すなわち、将来、そうなりたい、イコール、今はそうなっていないことを自分に宣言することです。
つまり、自分は信じていないということを証明することにほかならないからです。
このように、相反することをバランスよくできてはじめて、引き寄せの法則が発動し、自分の願ったとおりの現実が引き寄せられるのです。
うーーーん、やっぱりむずかしい??
2.引き寄せの法則の致命的欠陥
このように潜在意識の性質や、どうすればいいかについては、多くの人が語っています。
しかし、それでもうまくいかない人が後を絶たないのは、前の章を読んでわかっていただけたのではないでしょうか。
潜在意識がなかなか思うようにならないため、顕在意識の絶妙のコントロールが必要とされるからです。
さらには、引き寄せの法則には盲点ともいえる致命的な欠陥があります。
致命的という強い言葉を使うのは、それが引き寄せの法則を使ってみようという動機と表裏一体だからです。
つまり、避けて通ることがとても困難なのです。
その答えとは、「結果指向」です。
どういうことか説明しましょう。
まず、引き寄せの法則で願望を実現したい人は、そもそもなぜ引き寄せの法則を使いたいと思ったのでしょうか?
いくつか考えられるので、順にみていきましょう。
(1)結果指向になるのはどんな人か
①楽したい人
こういう人は、普通に行動して実現するのはしんどいなぁ、思うだけで叶うなら楽だなぁという人です。
つまり、思ってから実現するまでの間にある努力を省きたいのです。
引き寄せの法則によって、願いが叶っていない現在の状態から、突然ポンと願いが叶った現実になったら理想的だと思っているのです。
ちょっと極端な表現かもしれませんが、引き寄せの法則をうまく使いたいという気持ちの奥底には、誰しでも少しはこのような思いがあるのではないでしょうか。
②がんばるのを手放したい人
単に楽したいというより、多少は心のことを勉強した人に多く見られるタイプです。
私もそうでしたが、実際、自分でなんとかしようとしてがんばるのは疲れます。自力はエネルギーも小さく、できることは限られています。
だから、がんばることは手放して、大いなる存在などに委ねて他力を活用する。たしかに理にかなっています。
しかし、手放すということは、ある意味、段階をすっ飛ばして現在から未来へジャンプすることです。
未来を現在に持ってくる、現在と未来が重なると表現してもよいかもしれません。
でも、その間にあるものがなくなるという点で、それでもやっぱり結果指向に引っ張られやすいと言えます。
(2)なぜ結果指向だと引き寄せの法則が発動しないか
結果指向とは、結果が気になる心のあり方です。結果が得られる否かが最大の関心事です。
今していることがおろそかになり、過去の後悔や将来の心配に心をくだき、評価や判断に忙しく、そちらにエネルギーを取られます。
つまり、「今こここの瞬間」にいない状態です。
そのため、望む現実の創造に必要なエネルギーが不足してしまうのです。
また、結果がすべてなので、失敗を恐れる気持ちが強いです。
「すべての努力は無に帰した」
結果が思わしくなかった場合、結果指向でよく聞かれる言葉です。すべてが無に帰したら、それは誰だってイヤですよね。
イヤだから何とかして避けたいと思い、イヤなことが実現してしまうことを恐れます。
その恐れがさらに今に集中することを妨げるという悪循環に陥りがちです。
これでは引き寄せの法則の発動に必要な心と体の状態には程遠いことが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
3.法則の欠陥を克服するためのマインドセット
引き寄せの法則は、その動機からして結果指向に結びつきやすく、結果指向ではうまく発動しない。
ある意味構造的欠陥のようなもので、一体どうすりゃいいのとなりますよね。
でも、その欠陥を突破できるマインドセットがちゃんと存在するんです。順に説明します。
(1)結果だけ得ても無意味である
人間には、結果にこだわる性質があります。
「大切なのは結果」という言葉に象徴されるように、早く結果を出すのがよいことという刷り込みがあります。
これは西洋文化の特徴であるようですが、学校教育を通じて私たち日本人にも浸透しています。
成績という結果が将来の収入を左右するのですから重大な問題です。
だから、学校教育はいかにしてよい点数を取るかにフォーカスしているのです。
その一方で、人生の充実度という視点からみたとき、人は楽して得た結果にはたいして満足しないという性質があります。
過去の経験を思い出して欲しいのですが、棚ぼた的に手に入ったものに対してその時はうれしかったとしても、いつまでも大切にできたでしょうか。
得てしてすぐに飽きてしまい、また次に別のものが欲しくなったりしませんでしたか?
結果を出して得られる喜びは一時的です。だから、次々に新しい結果を求めてしまうのです。
成功中毒と言われるように、成功して結果が出ても、さらに大きな目標、上のレベルを求め続けてしまうと、キリがありません。
いくらお金を得ても同じことで、本当の満足から程遠い人をたくさん知っています。
つまり、手っ取り早く結果を得ることにはなんの意味もないと心に刻むべきなのです。
(2)楽しさはプロセスに没頭することで生まれる
それでは、結果でないとしたら、人は何によって満たされるのでしょうか。
結果に対するものといえば、、、
そう。プロセスですね。
先ほどの例とは逆に、苦労して手に入れたものって大切に感じますよね。
さらに、手に入れたもの自体は成長するとそうでもなくなったりします。たとえば、おもちゃとか趣味のものとか。
マイブームが去るとともに熱が冷めることはよくあるでしょう。
でも、手に入れるために、アルバイトしたり、家の手伝いをしたり、貯金したりといったそれを手に入れるために払った努力はいつまでも楽しい思い出として残るのではないでしょうか。
学生の頃の部活もそうです。市とか県、その他の大会で結果を出すことが目標だったかもしれません。
でも、後になって振り返ると、あれほど熱望した結果が得られたかどうかは対して重要でなくなっていたりします。
そこまでは言わないにせよ、目標に向かって一生懸命に励んだ練習、そこでの苦しかった思いや成し遂げた喜びの方が、何倍も記憶に残っていたりするものではないでしょうか。
このように結果にこだわってそれがうまくいき、物やお金を多く得たとしても、案外満足度は高くなく、人生の満足や充実度、したがって幸福感といったものは、いかに一生懸命にプロセスを楽しむ時間が長かったかによるのです。
4.プロセス指向における行動と結果の意義
では、結果指向ではなくプロセス指向において、引き寄せの法則を理解するとどのように捉えられるでしょうか。
もちろん楽して結果を手に入れるためではないことは言うまでもありません。
それでもなぜ引き寄せの法則を活用するかといえば、それが創造の真実だからです。
個としての自我(小我)ががんばるのではなく、大いなる存在(大我)委ねて結果を手放し、創造の力を発動させる。
それはある意味、未来を現在に引っ張ってくることかもしれないと先ほど述べました。
ここまではいいでしょう。
でも、この物理次元においては、プロセスを省くことはできません。
現在において、未来に願ったとおりになっている状態を引き寄せれば、見えない次元においては、それはすでに叶っています。
現実化するまでにタイムラグがあるだけです。
しかし、このタイムラグの間に余計なこと、つまり、願いが叶わないという逆の思いを発してしまいがちなのです。
結果指向だと、現在と未来の間にあるプロセスまで意識が行き届かず、せっかく成された創造をなかったことにしてしまうのです。
そこで、大切なことは、タイムラグのあいだに自分の状態を維持することです。
その点において、行動や結果は、従来とは異なる意味を与えられます。
もし願いが叶うと知っている自分だったらどうするでしょう。
現在から未来に向けて、今すべきことをコツコツやっていかないでしょうか。
つまり、行動するのは、あるべき最善の自分でいるため、願いが叶うあり方(Being)を保つために自然に導かれる状態(Doing)なのです。
同時に、楽しむためであり、成長の実感を得るためであり、つまりは、この世界を楽しむためです。
そして、結果とは、方向を示す舵みたいなものです。どの方向に行動すればよいかを示している、ただそれだけのものです。
山登りだって方向がわからないと歩けませんよね。正しい方向さえわかれば、一歩一歩登っていればいつか着きます。
プロセスをすっ飛ばして求めるようなものではないのです。
ヘリコプターで一瞬にして山頂に到着して、何の意味があるでしょう(笑)
5.引き寄せの法則が示す悟りに近づく生き方
このようにプロセス指向的意義づけで捉え直したとき、引き寄せの法則の実践は悟りに近づく生き方そのものとなります。
それは引き寄せの法則をプロセス指向的に実践するときの特徴である、以下の3点から説明が可能です。
①結果を手放す
結果指向では引き寄せの法則が発動しないことは、上でみたとおりです。
結果を手放すとは、大いなる存在の導きを信頼することであり、同時に自分の力を信じることです。
言い換えれば、自分こそが創造の主であると知ることであり、自分が誰かを知り、世界の創造の法則を知ることとは取りも直さず、悟りと同義なのです。
②常に完璧であることを認める
結果指向では、未来のある時点に完璧になるという考え方です。
一方、今は不完全であり、だからこそ、結果を求めて執着するし、焦りや苛立ちが生まれます。
しかし、プロセス指向では、今すべきこととをしている自分は常に完璧です。
最終ゴールなどはなく、どの段階であったとしても、あるべくしてそこにいるのです。
その考え方は、人間は成長し続ける存在であるという真理を含んでいます。
いぶかしく思った人もいるかもしれませんが、悟りは最終ゴールではありません。
大いなる存在、普遍意識、宇宙は無限です。人間が無限そのものになることなどできません。
人は無限にかぎりなく近づいていくために、無限に成長する存在です。
③「今ここ」にいる
結果指向では、幻の理想(いつか未来の完璧)を目指して評価を続け、過去を悔やみ未来を心配しています。
つまり、今にいません。
対して、プロセス指向では、フロー、集中、楽しさ、真剣な遊びといった言葉で表される状態、つまり、過去も未来もない、「今ここ」の状態です。
悟りが「今ここ」にしかないといわれるのは、時間もまた人の意識が生み出した錯覚であり、悟りはその錯覚から目覚めることだからです。
6.まとめ
以上みたように、引き寄せの法則を活用するには、簡単に陥りがちな結果指向から脱し、プロセス指向的に実践する必要があります。
そして、この考え方を使えば、フロー状態という、感情的にゆらがず、結果にとらわれない充実した時間を過ごすことが可能です。
なおかつ、引き寄せという現実創造の真理にのっとったものなので、気がついたら結果が生まれているという、願ってもないパフォーマンスの実現が可能です。
あなたが望むとおりのすばらしい現実をどんどん現実化されるとともに、今ここにいて、悟りの道を歩かれることを願っています。
以上
「引き寄せの法則」についてはこちらの記事もご参考になるかもしれません。