
誰にでもあるインナーチャイルド。子供の頃の満たされなかった欲求や傷ついた体験が作り出す心の傷、トラウマです。
どうして誰にでもあると断言できるかというと、親も人間である以上、子供が欲しがる無条件の愛を完璧に与えられるケースは極めて稀だからです。
ここまで読んで早合点しないでくださいね。
子供の頃に傷ついた体験なんて、当たり前。誰しも持っているものだし、それをバネに伸びていく人だっている。
だから、インナーチャイルドなど、取るに足らないと思うかもしれません。
でも、そうではないのです。
世の中的に見るとしっかり生きているように見える人、むしろ成功している人さえ、インナーチャイルドの影響で自分らしく生きられないケースがざらにあります。
そして、持って生まれた自分らしさから遠ざかるほど、人生は窮屈だし幸福からも離れていってしまうのです。
インナーチャイルドがあると、なぜ自分らしく生きられないのか、どんな症状として現れるのかをまとめてみました。
目 次
1.インナーチャイルドのよくある5つの症状
(1)自分は愛されていないという思い込み
インナーチャイルドは、欲求が満たされなかったり、傷ついた体験による心の傷(トラウマ)です。
持って生まれた子供の気質、出生時のトラウマ(バーストラウマ)の状態に左右されますが、「自分は愛されていない」「自分はありのままでは愛されない」といった思い込みを抱きやすくなります。
もちろん子供を愛せない親というのも現実に存在するわけですが、そうでない場合も、自分が望む形の愛情ではなかったという理由で、そうした思い込みを抱くことが起きてしまうのです。
(2)自分を肯定できない
「自分は愛されない、愛される価値がない」と思う人は、自分を否定的に捉える傾向が強くなります。
本来、自分の最大の味方であるはずの自分が敵に回るのですから大変です。
当たり前ですが、365日24時間一緒ですから、意地悪な自分、ずるい自分、自分の嫌なところ、醜いところも隠しようがありません。
たちまち見つかって、「あなたはひどい人」「あなたはダメだ」と、辛辣に批判されてしまいます。
また、肯定的な人であれば、あまり気にしないようなこともいちいち反応してさらに傷つくといった悪循環にはまりがちです。
(3)承認欲求が過大
自分で自分を否定するので、他人から肯定してもらう必要があります。
「自分を認めて欲しい」「注目を浴びたい」「ほめられたい」といった思いが典型的で、承認欲求と呼ばれます。
これは言い換えると、人と違う特別な存在でいたいということです。
人と違っていればなんでもいいわけで、子供が非行に走るのは、いいことをして認められないなら、悪いことをしてでも目立ちたい(無意識的に)と思ってしまうのが理由です。
今の社会は自分で自分を愛せない、つまり、承認欲求が大きい人が多いですから、承認というエネルギーを巡って互いに争います。
これが個人から国家のレベルに至るまで、世界に争いが絶えない理由です。
政治家さんなんかを見ていたらピンと来るのではないでしょうか。
求めても得られないことが苦しみとなります、仮に得たとしても満たされることはなくまた欲しくなり、延々と苦しみが続いていくのです。
その有様はまるで、海水で渇きを癒そうとするがごとしです。
(4)人の目が気になる
人から承認を得ることが一大事になってしまうと、他人の評価が気になります。
自分が人からどのように見られているのか人の目が気になり、人の顔色を伺うようになってしまいます。
けれど、そもそも自分がどうであっても、人の思いは人のもの。自分の力でコントロールできるものではありません。
自分の力の及ばないものに、自分の幸不幸を委ねてしまうとしたら、こんなに心細く、不安定なことはないのではないでしょうか。
さらに言うと、人は案外あなたのことを気にしていません。
あなただってそうではないでしょうか。たいていは自分のことで頭がいっぱいで、ひとのことなどかまっているほど暇ではないのでは?
ということは、人があなたをどう見るかなんて、その人の機嫌次第という可能性だってあるということです。
(5)自分の感じていることを抑えてしまう
自分を否定し、人の目を気にして気に入られるように生きていると、自分の感じていることを抑えてしまうことがよくあります。
感情や感覚は、出来事や人など対象に対して理由もなく自動的に発生しがちなものです。つまり、自分固有のものと捉えられているのです。
ですので、自分はありのままでは愛されないという発想となり、感じていることを抑圧してしまうのです。
このように感じていることを抑えているとそれが癖になって、自分が何を感じているのかがわからなくなります。
すると、今の自分の状態さえも自分で捉えられなくなるので、何が自分らしいかなどさっぱりわからないという状態になってしまうのです。
2.大人になっても続くインナーチャイルドの影響
上で見たようにインナーチャイルドによる症状があると、本来の自分がわからなくなります。
それは個々の出来事だけでなく、人生全般に対する捉え方を決めてしまいかねません。
自分のなかでは当たり前になるので、他人と比べて見直す機会もなく、大人になってもそのままを踏襲してしまうのです。
(1)親に反発するケース
インナーチャイルドによって親に反発する強い思いが形成されることがあります。
たとえば、父親がギャンブルにハマって借金を重ねて家族が塗炭の苦しみを味わったようなケースです。
このようなケースでは、自分は父親のような生き方だけはしない、家族に迷惑をかけるようなことはしないと強く思うかもしれません。
すると、こうあるべきという考え方が強くなってしまい、自分のしたいことや情熱につながることは二の次、三の次になります。
厄介なのは、自分の思いを抑圧しているので、その自覚すらないことです。
とにかく真面目に堅実に生きるのが一番、安定した収入が一番とばかり、仕事として公務員を選んだりします。
人生にリスクはつきものだし、高い目標にチャレンジするのは一種の賭けとみることもできます。
たとえば、好きなことをやるために関連する事業を営む業種への転職、脱サラして自分で事業を行うことなどです。
ある人が本心でそのような生き方を望んでいたとしても、リスクを取るのをギャンブルと一緒くたにするようなことが起きてきます。
自分が本心からやりたかったことを押さえ込んだまま一生を終えるかもしれません。
もしそれがその人にとって人生の目的につながるようなものだったとしたら、、
(2)親のいいなりの人生を送るケース
親に反発するのが一つの典型だとしたら、親の言う通りに生きるのはその反対のよくあるパターンでしょう。
これは親が過保護な場合によく見られます。
殺し文句は「あなたのためなのよ」です。
これは大嘘で、本当は親自身のためです。
親が自分が叶えられなかった夢を満たすため、子供の業績を自慢したいがため、子供を道具として利用しているだけです。
だから、子供が親の思うとおりにならないと、殺し文句を使って従わせようとします。
これをされると子供の方は、親の言いなりなっていないと自分は愛されないと感じます(条件付きの愛)。
子供が親の期待に応えられないと、グレたりして前項の反発する方向に向かうのですが、子供の能力が高いとかえって問題が先送りされます。
ずっと優等生できて、親の自慢の子供で、友達も多く、世間からも羨ましがられる典型的な成功している人生を送っている人であっても油断はできません。
成人して就職や結婚をしてから、あるいは、中年期になってつまずくパターンがみられます。
その場合、何に対しても情熱がわかない、砂を噛むような味気なさを感じるなど、生きることに対するエネルギー不足として現れます。
親子関係がわるいわけでもなく、むしろ、とても仲が良いケースもあり、親からすると何がなんだかわからないという問題の出方をします。
このようなケースも、どこからが本来の自分でどこからが影響を受けた自分かわからないということが起きます。
(3)親と同じことをしてしまうケース
アル中、ギャンブル、虐待など、親と同じことを繰り返すパターンもあります。
虐待の連鎖などと言われますが、子供の自分が愛されたという思いがないため、子供にどう接していいかわからず、結局親と同じことをしてしまうということがあるようです。
また、自分の子供を見てもどうしてもかわいいと思えず、育児疲れも相まって虐待に至るといったケースもあります。
さらに、親と同じにはならないという思いから形は反対の行動を取っても、いつのまにか同じことをしている場合もあります。
結局、相手の望むことは何か、相手がどう感じているかを感知して、相手の望むことをしてあげるのが望ましいのですが、自分の感じていることさえわからないのでできません。
思い込みでやってもうまくいかず、自己否定的なので「こんなにしてあげているのに」とか「どうせ自分は」という思いが強くなり、自分を制御できなくなりがちです。
(4)頑張りすぎて燃え尽きるケース
「自分は愛されない」「自分は価値がない」という思いを覆そうと、適正な範囲を超えて頑張ってしまうケースもあります。
条件付きの愛に慣らされてしまったケースがこれに当たります。
初めは親から、長じてからは、上司、同僚、恋愛の相手など自分の価値を認めてもらうため、とにかく頑張ります。
長時間労働をしたり、相手の無茶な要求をそのまま受け入れたり、まるで価値のない自分を罰しているかのようです。
この場合も、相手の承認というエネルギーが欲しくて無理をするのですが、残念ながらやはり自分を満たすことはできません。
自分らしさを押し殺すと、本来のエネルギー源につながれません。
馬の鼻先に人参をぶら下げたように、とにかく他人の承認欲しさに頑張りますが、いつまでたってもキリがないので、やがて疲れて燃え尽きてしまいます。
3.インナーチャイルドを癒すには
インナーチャイルドが、いかに人を本来のその人の生き方から外れさせ、誰のための人生かわからないような生き方にミスリードするかわかったでしょうか。
多くの場合、それがインナーチャイルドの影響だという自覚がないため、対処が困難になっています。
ですから、人生が思うようにいっていない場合、原因が漠然としていてよくわからないような場合も含め、何かあるに違いないというスタンスでインナーチャイルド的要因を探すことが有効です。
一般的に、インナーチャイルドを癒すプロセスとしては、
①インナーチャイルドがあることに気づき(思い出し)、
②抑え込んでいた感情を吐露し、
③ありのままの自分を受け入れ認め、
④そしてこれからどうしたいのか未来へ向けて自分を再構築する
という順序を辿ります。
インナーチャイルドを癒す方法については、別の記事にまとめたのでそちらも参考にしてください。
4.自分らしさに気づくには
インナーチャイルドを癒したとしても、それだけでさっそく自分らしい人生を生きられるかというと、残念ながらそうではありません。
昨今、多くの人が「自分らしく生きる」「自分らしい人生」というフレーズに憧れを抱く風潮があるようですが、はっきり言ってそれは幻想です。
すべてのことはニュートラルと言われますが、「自分らしく」に関しても同じです。
自分にとって自分らしく生きることのマイナス面を見ておく必要があります。
なぜなら、無意識の反発で自分らしい方向にシフトしづらかったり、自分らしく生き始めてから、こんなはずではなかったという事態に陥りやすくなったりするからです。
自分らしいことのマイナスなんて、考えたこともなかったという人のために、いくつか例を挙げておきます。
たとえば、ゴマかして生きられない、自分勝手な気がする(罪悪感)、社会に適合しにくい、同調しにくい、普通でいられない、これまでの友人が離れていく、自分で責任を取らないといけない、他人のせいにできない、、
まだまだいっぱいあると思います。
理想を言えば、「自分らしい」ことと「自分らしくない」こと、両者が、同じぐらいによいことでもわるいことでもない状態まで持って行きます。
そのためには、自分らしくないことのメリット、自分らしいことのメリット、自分らしくないことのデメリットなどについても、考えてみるとよいでしょう。
その上で、自分はどうしたいのか考え、それでも「自分らしく」生きる方を選びたいと思ったら、そこから本当の意味で自分らしい人生に向かって進んでいけるのです。
5.まとめ
ここまで見てきたように、成長過程で影響を与え続けてきたインナーチャイルドは、厳密には切り分けられないほど自分と一体化しています。
前項で見たように、「自分らしく」あればすべてが解決するような都合のいいものでもありません。
大切なのは、観念的に理想化された「自分らしさ」という概念を追い求めることではありません。
自分の感覚とつながり、目の前のことを自分はどう感じているのか、どうなっていきたいのかをその都度心の反応を元に判断し、選択することだと思います。
インナーチャイルドを癒して、自分らしく生きる人が増えるといいなと思います。
以上